アオハルの続きは、大人のキスから

「もう心配しなくても大丈夫。お兄ちゃんがママを探すのを手伝ってやるから」

「……本当? おじちゃん」

「……お兄ちゃんだ」

 思わず噴き出してしまった小鈴を見て、久遠は渋い顔をする。だが、近くにいたホテルマンに声をかけて女の子が母親とはぐれてしまったことを伝えた。

 ホテルマンの話では、同じ階で展示会をしているホールがあるらしく母親はそこにいるかもしれないということ。

 ホテルマンはすぐさまスタッフに連絡を取り、母親探しに動いてくれた。

 迷子の女の子はホテルスタッフが預かりますと言ってきたのだが、久遠は首を横に振る。

「これ以上、知らない大人に囲まれたら、また泣き出してしまうでしょう。それなら、私が彼女を見ていますよ」

 渋るホテルマンに、久遠は胸ポケットから名刺を取り差し出した。

「不審者ではありませんから、ご安心を。貴方と同業者です」

「ベリーコンチネンタルホテルのGM、蘭さま……! 失礼いたしました」

 恭しく頭を下げるホテルマンに、久遠は首を横に振る。

「今はとにかく彼女のママを探してあげてください。私たちは、このお店のソファーで待っていますから」

 先ほどまでのプライベートの顔ではなく、そこにはホテルマンとして、そしてGMとしての顔があった。凜々しいその様子に、小鈴は目が離せない。

「もう少しだけ、ここで待っていような」

「うん……お兄ちゃん」

「よし。イイ子だ、イイ子だ」

「プッ」

 どうやらおじさんと言われたことに、傷ついていた様子。女の子がお兄ちゃんと言ってくれたことで、機嫌が直ったようだ。


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