アオハルの続きは、大人のキスから


『やっぱりうちのお父さんが小鈴獲得に乗り出したようね。小鈴は小鈴らしく。アンタの思った道を行きなさい。お父さんの願いは無理強いだから、聞かなくてよろしい』

 きっと山野井の跡継ぎのこと、そして俊作のことが椿の耳に入ったのだろう。
 
 そして、叔父の考えを前々から知っていたようにも見える。知っていたからこそ、小鈴に早く久遠に会いに行けと言ったのだろう。

 小鈴は椿からのメッセージに大きく頷いたあと、久遠と共にホテルをあとにした。 


 

「ありがとうございました、久遠さん」

「いや、俺も久しぶりに小鈴と一緒にいられて嬉しかった。今度は、もっと長くお前と一緒にいたい」

「っ!」

「いさせてくれ」

 小鈴の手を取り、チュッと指先に唇を落としてくる。

 十年前、大学生だった久遠さんも似たようなことをしていたが、大人になった彼がこんなことをすると破壊力が凄まじい。彼から大人の艶を感じ、目眩がしそうだ。

 ラグジュアリーホテルで、人気があるアフタヌーンティーをごちそうになったあと、ベリーヒルズビルの地下駐車場に戻ってきた。

 久遠は「家まで送る」と言い張ったが、それを小鈴は固辞したのだ。このあと、久遠は用事があると言っていた。少しでも煩わしたくはない。

 今日は久しぶりに洋服だ。ロングスカートとはいえ、なんとなく足元が覚束ない。

 着慣れない洋服姿の小鈴の手を取り、車から降ろしてくれる。そのとき、耳元で囁いてきた。

「着物姿の小鈴は凜としていて美しいけど、洋服姿もいいな。かわいい。今度はもっと長い時間堪能させてくれ」

「なにを……!」

 恥ずかしくなって久遠から離れる小鈴に目を丸くしたあと、楽しげに笑い声を上げた。


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