アオハルの続きは、大人のキスから
「気をつけて帰るんだぞ、小鈴」
「はい、わかりました」
「なんとなく、心配なんだよなぁ。小鈴ってしっかりしていそうで、結構抜けているところがあるから」
「そんなこと言うの、久遠さんだけです!」
現に抜けているなどと失礼なことを言うのは、今も昔も久遠ただ一人だ。
皆が皆、しっかりしていると言ってくれるのに、と不満をぶつけると、彼は目を柔らかく細めた。
「俺には甘えてくれているっていうことだろう?」
「え?」
「俺の前だけなら、抜けていても許す」
「久遠さん!」
ムキになって反論しようとしたが、内心久遠の言っていることは正しいのかもと小鈴は思う。
久遠の前では、強がったりすることが多い気がする。そして、甘えることも……
素の自分を出せる相手、という意味では、昔も今も小鈴にとっては久遠だけかもしれない。
小鈴にとって、唯一心を許すことができる異性。そして、意地を張ったり強がったことを言うのも、相手が受け止めてくれると信じているからこそ。
やはり、小鈴にとって久遠は、昔も今も大事な人という立ち位置は変わらない。
久遠の立場、家柄を考えると怯みたくなる。それは、仕方がないことだ。
だけど、それがわかっていても離れたくない。十年前の再現なんて、まっぴらだ。
ジッと久遠を見つめると、彼は口元に笑みを浮かべて首を傾げる。
年月が経ち、色々な苦労と努力をしてGMという立場になった久遠。その隣に立つには小鈴では荷が重いかもしれない。
だが、それでも彼の隣に立ちたい。そのための努力は惜しみたくない。
「……その言葉、鵜呑みにしちゃいますよ?」
頬を赤らめて視線をそらして呟くと、久遠が息を呑んだ音が聞こえた。その瞬間、肩を抱き寄せられ、そして――
「んっ……っ!」
地下駐車場の暗がり。静かなその場所で激しいキスを仕掛けられる。
だが、それを拒むことはしなかった。唇を離しては視線を絡ませ、そして再び重ねる。 その繰り返しに思考も身体も蕩けてしまいそうだ。
ゆっくりと唇を離した二人だったが、名残惜しい様子は一緒だった。