アオハルの続きは、大人のキスから
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小鈴が模擬結婚式の花嫁役をすることは、フロントのスタッフは周知している。彼らにこの資料を久遠に渡してほしいとお願いしよう。
エレベーターから降りてフロントへと足を向けようとしたのだが、すぐにその動きを止めた。
そこには、すでにホテルマンの顔をした久遠がいたからだ。
声を掛けようとして、小鈴は動きを止めた。彼の傍には美しい一人の女性がいたからだ。
その女性は身なりからして、どこかのお嬢様といった雰囲気がする。いや、起業した女社長だろうか。
久遠の近くで愛想良くほほ笑んで、穏やかな雰囲気で談笑をしている。その二人の姿がとてもお似合いで、胸がギュッと掴まれたように苦しく痛む。
美しい女性が、久遠の腕にソッと触れて寄り添う。その様子は、小鈴から見てもお似合いに見えた。
真っ白な半紙に一滴薄墨が落とされたように、小鈴の心が重くざわつく。
ふと、フロアの隅で常連客らしき女性が噂話をしているのが耳に入ってきた。
「あの方、女性下着メーカーの社長でしょ?」
「そうそう。それも父親は大手銀行の頭取らしいわよ。家柄もぴったりでお似合いよね」
「やっぱりGMってベリーヒルズビレッジ所有者と血縁関係って本当だったんだ」
「らしいわよ。GMって海外の有名ホテルを転々としていたけど、今回ここに戻ってきたのは家を継ぐためらしいわ」
「はぁ、なるほど。それで、手始めにベリーコンチネンタルのGMに就任したってことか」
「ああいう才色兼備な女性がGMの隣に立つのが相場よねぇ」
死角にいる小鈴の存在に気がつかなかった彼女たちはそのあと、その場を去って行った。