アオハルの続きは、大人のキスから
「その通り、なんだよね」
先ほどの女性たちが話していたことは、世間一般の考えだろう。小鈴も心の奥底ではそう思っていた。
格式が高い家に嫁ぐということは、そういうこと。
結婚とは、残念ながら家と家の繋がりを重視することもある。それが現実だ。
それに、久遠はもっと高みを目指しているようにも見える。それなのに、小鈴では彼の背中を押すこともできなければ、力を貸すこともできない。
しかし、先ほどの女性なら久遠の力になれる。それが明らかであることが辛かった。
頭ではわかっていたが、やはり無理なのだろうか。気持ちだけで、結婚はできない。それを他人から改めて指摘されて小鈴は自身を今まで奮い立たせていたことが馬鹿らしくなってしまう。
努力しても手が届かない。そういうことは人生においてよくあること。十年前の自分が経験したことだ。
わかっていたことだが、それでも……諦めたくなかった。
久遠と再会して、どれほど彼に心惹かれていたのか。改めて認識してしまった今。簡単には彼を諦めることができない。
久遠と先ほどの女性は連れだって、どこかに行ってしまった。
小さく息を吐き出したあと、小鈴はフロントの女性に資料を久遠に渡してほしいとお願いしてホテルを出る。
エレベーターに乗っている間も、そしてビルの一階フロアに降り立った今も、なにも考えられない。考えることを心が拒否している。そんなふうに感じた。
「あ……そうだった」
フラリと外に出ると、大粒の雨が頬を濡らす。そこでようやく雨が降っていたことを思い出した。
このままでは濡れてしまう。新調した洋服なのに、と思ったところで、小鈴は自虐的に笑う。