アオハルの続きは、大人のキスから
「その情報を小鈴にリークしたのは、私だ。小鈴には苦労をさせたくなかったからね」
「……」
「釣り合いの取れない家に嫁ぐことになったら、小鈴はきっとお前に見合うようになりたいと頑張るだろう。頑張って、頑張って……そして、疲れ切る。それがわかっているのに、小鈴を渡せない。そう思ったから、私は小鈴に蘭のバックを話した。そのことについては、謝らないから」
再び俊作は久遠に背を向け、挑発的に言葉を言い放つ。
「さぁて、ベリーコンチネンタルのGMさんは、どんな一手を繰り出すのか。見物だな」
ヒラヒラと手を上げて、俊作はその場を去って行く。あれが、彼なりの謝罪なのだろう。
これで、ようやく小鈴の憂いの元がすべて揃った。
小鈴が自分から一歩を踏み出すために、彼女の憂いはすべて晴らす。その役目は、他の誰にも譲らない。
久遠はスマホをジャケットから取りだし、今から会う予定だった人物に電話をする。
「叔母さん、スミマセン。大事な用ができてしまいまして……ええ、そう。俺の人生を左右するような大事な用事です。……はい、ありがとうございます」
通話を切り、向かう先はもちろん呉服屋山野井本店がある浅草だ。
久遠はベリ―ヒルズビルに戻り、自分の車に乗り込むと一路浅草へと向かった。