キス、涙々。
「俺さ、ネクタイの結び方知らないんだよね」
「……うそ。あともうちょっと締めるだけじゃん」
じわじわと熱くなってくる顔と……目元を、隠したいのに。
それさえも許してくれず、もっと腕を引かれる。
さらに近くなった距離。
ちょうどわたしの顔あたりにハギくんの胸がくるから、それまでじわじわだった熱がぶわっと一気にあがってく。
どこに視線を置いたらいいかわからない。
かといってもう目をつぶることもできず、必死に顔をうつむけていた。
「ねえ、ヤオ。顔あげてよ」
や、やだ。
ふるふると首を横に振る。
「なんで?」
わかってるくせに。
わかってて、聞いてるくせに。