キス、涙々。
前からかかった、間延びした声に振りかえる。
そこに立っていたのは、いい笑顔をしたハギくんだった。
「朝っぱらからーイチャつくのー止めてもらっていっすかあ」
なんか声にドスを感じるのは気のせい?
「いや、イチャついては……」
「指導そっちのけで加賀屋と楽しそうにしてた」
「この時間に指導する生徒なんかお前以外いねえっつの」
加賀屋くんの言うとおりだ。
わたしはこくこくと頷いた。
だって、わたしたちが待っていたのはハギくんだったから。
もう遅刻寸前で、みんな指導も終わって校舎に入ってるし。
ここまでぎりぎりに登校してくる生徒は、毎回ハギくんだけだった。
「ハギくん、もうすこしはやく来れないかな?こんなぎりぎりじゃハギくんもしんどいでしょ」
「んー朝はどうしても弱いんだよね。俺だってはやく来れるならそれに越したことはないんだけど」
「だよね、じゃあ……うー…ええっと……」
どうしたらいいんだろう、と考えていたところで加賀屋くんが割って入った。
「それより早く指導すんぞ。もう時間がない」
「あ、いたんですか副会長サン。気づかなかった」
「白々しい……」