キス、涙々。


そして当日の巡回当番では、午前の前半と午後の後半を担当することになった。


解散となって、わたしも教室を出ようとしたとき。


出入り口近くにいた書記をしていた委員の女の子が、黒板を見て「あれ」と声をあげた。



「八尾さんの配当、すこし多いみたいだけど平気?」

「あ、はい!大丈夫です。ほかに用事もないし」

「でも、友達とまわる約束とかしてるんじゃない?」

「そ、それも大丈夫です……」



美晴ちゃんはやっぱり、すこしも時間を取れないらしかった。



『なんで文化祭のために身を粉にしてるあたしが文化祭を回れないのよ!あたしの粉をどこに撒いたわけ!?』


半ばヤケクソのように、昨日のお昼休みに泣きながらそう零していたことを思い出す。




「そう?じゃあお願いしてもいいかな。ごめんね」

「いえ、全然!」

「八尾さんは仕事も丁寧だからいつも助かってるよ」

「あ、えと……あ、ありがとうござい、ます」



どうしよう、こんな長く委員の子と話したことない。


なにか変なことを言ってしまわないか、ひやひやする。


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