キス、涙々。
しどろもどろになりながらもお礼をいって、出ていこうとしたときだった。
「八尾さん」
「へっ、あ、」
呼び止められて、びくりと肩を震わせる。
おそるおそる振りかえると、
「うちら同い年なんだし、敬語じゃなくていいからね」
その女の子─────粟田さんの笑顔がやさしく広がっていた。
「え、う」
「あ、ましろちゃんって呼んでいい?ずっと呼んでみたかったんだ」
「っう……う、うん!」
「うちのことも名前でいいよ。えっと、まな」
「真夏ちゃん……だよね?」
一瞬びっくりしたような粟田さんは、すぐに眩しい笑みをみせてくれる。
「だーいせーかいっ!」
まるで夏のように眩しい笑顔を見せてくれる……真夏ちゃん。
どこか自分と似ている名前だと気づいたのは、彼女と連絡先を交換して教室を出たあとだった。