キス、涙々。
どうやら、わたしに訪れた奇跡はそれだけじゃなかったらしい。
クラスでの出し物はチョコバナナの模擬店。
どの委員にも属していない人が販売員をすることになっているんだけど、当日までの準備はみんなでしようという方針で。
その日、手の空いていたわたしもやれることを手伝っていたときだった。
「……できた」
ひとりでひたすら塗っていた看板。
『チョコバナナ』と大きく書かれた文字に、カラフルでポップなイラスト。
こんな重要な部分をわたしが本当にやってもいいのかな、と任されたときに思ったけれど。
下書きはしてあって、その上から指定の色を塗り終わったところだった。
どうしよう、誰かに確認してもらいたい。
まっさきに美晴ちゃんを探したけど、やっぱり教室にはいなかった。
「あのっ!ちょっといい、かな?」
「ん?あ、あー……八尾さん。どしたの?」