キス、涙々。
振り返ったクラスメイトの神谷さんはとっさに笑ってくれる。
声をかけたのがわたしだとわかって、すこしだけ声のトーンを落としたようだった。
「あのね、これ、色塗り終わったんだけど……確認してほしくて」
気まずい空気のなか、彼女は戸惑ったあとしゃがみ込んでくれた。
「パネルの設計図ある?」
「あ、うん!これ……」
「さんきゅ」
神谷さんが看板と、設計図を見比べる。
「……うん、いいんじゃない。あとは“私が塗りました”ってサインでも入れたら完璧」
「えっ、いいのかな……端のほうがいいよね?」
ペンキの筆をふたたび持つと、神谷さんは思わずといったように吹き出した。
「ちょ、待って待って!冗談だし!これ絵画とかじゃないから!」
「あ、そっか。そうだよね……!?」
すぐに自分のしようとしたことの可笑しさに気づき、恥ずかしくてたまらなくなる。