キス、涙々。
ハギくんに会ったのはそれから数日後だった。
放課後に中央棟を歩いていたわたしを、ハギくんは後ろから呼び止めた。
「ずいぶんと楽しそうだね、ヤオ」
「なんで後ろ姿でわかったの?」
「わかるよ。ヤオのことならなんでも」
「それはちょっと怖いなぁ」
冗談交じりでつぶやいたらハギくんも軽く笑った。
となりに並んで、「手伝うよ」とわたしの持っていた段ボールを持ってくれる。
「え、大丈夫だよ?ハギくん用事あるんじゃないの?」
「んーいや、もう帰るところだったから」
たしかにハギくんの肩にはあまり重くなさそうなバッグがかかっていて。
わたしはそのご厚意に、途中まで甘えることにした。
模擬店で使う装飾の詰められてる段ボール。
ひとりで運ぶにはすこしばかり重かったから助かった。
「うわ、重いじゃんこれ。ほんとに一人で運ぶように言われたの?」
わたしは曖昧に笑ってから頷いた。