キス、涙々。
そのうち、わたしの教室が見えてきた。
「ごめんね。こんなところまで運ばせちゃって」
「いいよいいよ。じゃあ頑張ってね」
「うん!どうもありがとう」
さすがに教室の中まで運んでもらうのは忍びなく、教室前の廊下で段ボールの受け渡しをする。
「乗せるよ?」
「うん」
ハギくんがゆっくり腕を下ろした。
懐かしい重みにすこしたたらを踏む。
「……やっぱ中まで、」
と、ハギくんがなにかを言いかけたときだった。
教室のとびらが、ガラッと開いたのは。
「あ、一足遅かった……か」
「山本くん」
中から出てきたのは同じクラスの山本くんで、びっくりしたようにわたしとハギくんを交互に見ていた。
そして申し訳なさそうに頬をかいて。
「ごめん、いまから行こうとしてたんだけど」
「気にしないで。それにハギくんも手伝ってくれたし」