キス、涙々。


「そっか……悪いな、萩。助けてもらったみたいで」

「いや、いーよ」


謝る山本くんに、ハギくんは笑って返していた。


その笑顔はいつもとどこか違うような気がしたけれど、具体的にどこが違うかは説明できないまま、山本くんと一緒に教室に入ろうとしたときだった。



「あ、待ってヤオ。忘れ物」

「へ?なに……」


わたしが振り向いたと同時、両手がふっと軽くなる。



「重いから気をつけてね」

「え、うわっ重っ!?」


すべての段ボールを山本くんに押しつけたハギくんは、わたしの右手をとって……手の甲に、すっと触れるようなキスをした。


いきなりの出来事に固まるわたし。



伏せていた瞼をゆっくり持ち上げたハギくんと目が合えば、深緑を閉じ込めたような瞳が柔らかく細められ、心臓が危うく止まりかけた。


そのまま横に視線を向けるハギくん。

となりから山本くんが息を呑む気配がした。








「それではお姫さま、しばしのお別れを」


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