キス、涙々。
「すっげー牽制された……」
ハギくんの後ろ姿を見ながら、山本くんが思わずといったように呟いた。
そのうち、山本くんがなぜか肩を落としながら教室に入っていったけど。
すこしの間、わたしはその場から動けなかった。
手の甲に熱が集まるのを感じる。
「……そんなわけないよね?」
ぎゅっと右手を胸に抱いた。
遅れて、心臓がばくばくととんでもない勢いで音を立てる。
ひとつだけわからないことがあった。
『俺もいやじゃない。じゃあずっと隣にいてよ』
『うっ……うん』
あのときのわたしは、どっちの意味で頷いたんだろう。
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「……さっきうんって言ったくせに。…………はあ、さすがに余裕なさすぎ……カッコ悪」