キス、涙々。
……昨日までのわたしは本当に滑稽だったと思う。
わたしなんかが誰かに好かれるわけがない。
わたしなんかが、誰かと友達になれるわけがない。
すこし考えたらわかることだった。
身の程を知れ、ってあれほど言われてきたはずなのに。
「あれ?ぐず子じゃん」
その声を背中に受けるまで忘れていた。
ほぼ反射的に振り返ってしまったのは、きっとあの頃のなごり。
自分とはちがう制服が男女あわせて5人ほど。
何人かに見覚えがあって、その中心にある顔だけは
……一日も忘れたことはなかった。
「っ、!」
走り出そうとしたわたしを止めたのは誰かの蹴りだった。
背中に衝撃を受けて、そのまま転けるように膝をつく。
「逃げんなよ。せっかくの再会じゃない」
「……長野さん」
「ちょーっとお話しよっか。ねぇ?ぐず子」
蹴られた背中よりもずっと、心臓が痛かった。