キス、涙々。


そのまま引きずられるようにして連れてこられたのは、駅の近くにあるひとけのない細道。

どんっと壁に押しつけられて、痛みに顔を歪める。



「おい、こっち向けって」


いつまでも俯いていると、長野さんがイラついたような声を出した。



「それともなに、あたしの言うことが聞けないわけ?」


そんなことない、という言葉は恐怖のあまり出なかった。

必死に首を横に振って、涙のにじむ顔をあげる。


わたしの顔をのぞき込んだひとりが、ちっと舌打ちをした。



「またかよこいつ。ホントいつも泣いてんね」


長野さんと同じく中学校の同級生だった。

なにも言えないでいると、輪の中にいたひとりの男子が顔をのぞき込んでくる。



「え、まっじか。ほんとにアユリちゃんじゃん!」

「だから顔だけだって。こいつ、スタイル悪いし」

「えーあー……たしかにEはなさそうだな。ちょ、萎えたかも」

「サイテー、キモーい」


げらげらと響く笑い声だけが、ずっと遠くから聞こえてくる。


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