キス、涙々。


真っ白になる頭。

笑われて恥ずかしいという感情さえ沸いてこなかった。


長野さんがわたしの制服のリボンをつまんだ。



「ふーん」


てっきりあのときみたいに脱がされるかと思ったけど、そのまますんなり指を離される。



「ぐず子あんた、三陽(さんよう)高校だったんだ。あのクソ真面目でガリ勉ばっかが集う進学校」

「……」

「返事」

「……うん」


ぱんっと乾いた音がした。

すぐに左の頬がじんじんと熱くなる。



「敬語使えってば。そんなことも忘れちゃった?」

「っごめん、なさい」


「あーあ、やっぱりあんた、あたしたちと離れたのダメだったね。こんな生意気になっちゃって」


殴られたばかりの頬にそっと手を添えられた。


その優しい手つきでさえびくっと反応してしまう。


ただ、恐怖に身体が支配されていた。


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