キス、涙々。
「うえぇ~……みばるぢゃん~!」
「まぁた泣いてるよこの子は」
「うっ、う、ハギくんがロシアでジェルネイル……っ」
「うーん、さすがに想像がつかない」
先生への報告を終わらせ、教室についたわたしをなぐさめてくれたのは友人の美晴ちゃん。
言いたいことを整理して、今朝あったことを伝えていく。
すべてを話し終わったあと、ふむふむと納得したように美晴ちゃんはうなずいた。
「なるほどね。状況はわかった」
「美晴ちゃん……」
「萩はましろのことが好きなのよ」
「美晴ちゃんヤケにならないで!」
ヤケなんかじゃない、とわたしの肩に手を置いた美晴ちゃん。
「いい?好きな子は虐めたくなるって人もこの世の中にはいるの。それよ。それが萩さくらという男よ」
「ちが、ちがう……あの人は、ハギくんは。わたしの……」
自分で言うのも情けなくて、言いよどんでしまう。
ハギくんが好きなのはわたしじゃない。
わたしに恋愛感情をもっているわけじゃない。
だって──────
「ハギくんはわたしの泣き顔が好きなだけだよ」
こんなみじめな気持ちになることってある?
泣き顔が好かれるなんて、一体どういうことですか。