キス、涙々。
どうして、それを。
口には出さなかったのに、表情でなにが言いたいかわかったのか長野さんはにやりと口角をあげた。
「去年いろいろあったことも知ってるわよ。大変だったねぇ」
すこしも思っていないような口ぶりだったけど、反論することもできなくて。
反応を示さないわたしに、長野さんはすこし面白くなさそうにした。
そして結論だけを言うように早口で告げられた。
「今年もちゃんと目立たせてあげるね」
「……?」
「わからないかなぁ。茶化しに行ってあげるってコト。そうね……どうせだから、イイ男に告白してもらおっか!」
なにを言っているのか理解できなかった。
放心するわたしに、長野さんはやさしく笑いかけた。
中学のときから読者モデルだった彼女が笑うとまるで空気が変わる。
そんな笑みを浮かべたまま殴られていたあの頃をいやでも思い出してしまった。
「八尾ましろ」
「っ、」