キス、涙々。
ハギ、考える
「げ」
スマホの画面を確認すると、そこには“加賀屋”の文字が表示されていた。
しばらく眺めていたものの一向に鳴り止まないそれは、はやく出ろと言わんばかりの勢いで。
取るしかないか、と小さく息を吐いて画面をタップした。
「おかけになった電話番号は現在使われておりませーん」
『お前いまどこにいる?』
「は?どこって学校だけど」
『そっちにあいつ来てないか?』
その“あいつ”が誰のことを指しているのか直ぐにわかった。
食べ終わったばかりのパンの袋を教室のゴミ箱に捨ててから、そのまま廊下に出る。
「ヤオが、どうかした」
『様子がおかしかったんだ』
いますぐこっちに来てほしい、と電話の向こうから聞こえてくる前に、
俺は通話を終了させて硬いリノリウムの床を蹴っていた。