キス、涙々。
「加賀屋」
「早かったな」
行き先は聞いていなかったが、すぐに見つけることができた。
文系コースの棟と理系コースの棟と結ぶ、渡り廊下。
ちょうど向こうから来ていたのは加賀屋と、
「……会長?」
なぜか泣いている生徒会長だった。
この人の弱っているところは今までに見たことがなかったから、どうしたらいいかわからずちらりと加賀屋を見やる。
直接聞け、という意味なんだろう、
加賀屋は視線をよこにいる会長に流した。
「ねえ、なにがあったか話せる?」
「……あたしのせいだ」
消え入りそうなくらい小さな声が届く。
会長は真っ赤になった目を、何度もこすっていた。
「最近、様子がおかしかったのに。あたしはそれをわかってたのに、何もしなかった。文化祭の準備が忙しいからって、ましろのこと放っておいたの」
「おい、あんま擦るな。腫れるぞ」
そんな加賀屋の手も振り払って、会長は泣きじゃくる。
「どうしよう、どうしよう。あたし傷つけちゃった、ましろのこと怖がらせちゃった……嫌われちゃった……っ」