キス、涙々。
なにがあったのかわからない。
会長がここまで取り乱すなんて、よっぽどのことがあったのか。
というか、ヤオはどこにいるんだ。
そう聞けば会長はわからないと言った。連絡をしても反応がない、と。
加賀屋も首をよこに振る。
「そっか」
自分の声は思っていたより落ち着いていた。
……いや、そう見せているだけかもしれない。
だってヤオは俺のすべてなのだから。
本当は今すぐにでも探しにいきたいけど、どこにいるのかわからないし、それでは解決にならないだろう。
「会長」
なにか責められるとでも勘違いしたのか、びくっと肩を揺らされる。
何があったのかはわからない。
もし万が一、本当に会長がヤオのことを傷つけていたとしても。
「ヤオは会長のこと嫌いにならないよ」
「っ、なんでわか」
「わかるよ。俺と会長、あんまり話したことないけど俺はあんたのこと、会長になる前からよく知ってる。なんでだと思う?」