キス、涙々。
それを知らされたとき、自分がどうしたのか覚えていない。
たぶん完璧に我を失っていたと思う。
怯えたように見つめてくる会長と神谷さんに、俺を押さえつける加賀屋。
口の中に鉄の味が広がっていて、左の頬がじんと熱を帯びている。
暴走しかかった俺をこの男がどうにか止めてくれたのだと悟った。
「加賀屋、離してくれる?もう落ち着いたから」
「その開ききった瞳孔で言われても説得力ねぇんだよ」
それでも離してくれた加賀屋は、すぐにでも動けるように身構えているようだった。
「怖がらせてごめん」
女子たちにそう謝ってから、自分の指を折りながら数えていく。
怖いほどに冷めた頭が、どんどん冴えていくのを感じていた。
「さて、どうしてやろうか」
────文化祭まではあと三日だった。