キス、涙々。


それをきっかけに動物フィーバーはおとずれた。


立て続けにウサギさん、クマさん、またネコさんをみつけ、スタンプをもらうことに成功する。


あとは、2周目のウサギさんとクマさんか……



熱中していたのか、午前の巡回が終わってもわたしは校内をうろついていた。


なんだかいつもより視界が広く見える。

みんなの顔がよくわかるような、そんな気がする。



「学校って、こんなに広かったんだ」


そのときだった。

なにかを焼いているような、香ばしい匂いが漂ってきたのは。




「焼きトウモロコシいかがっすかー」


焼きトウモロコシ……

すごく上手に焼いているものだから、じっと思わず見つめてしまう。


そのうち、ばちっと視線が合った。



「あ、八尾さん。いる?焼きモロコシ」

「えと、今日お金持ってきてなくて……」


言い訳みたいになってしまった。

だけど本当に財布を持ってきてなくて。


もともと文化祭を楽しめる状態ではなかったし、もうすぐ来る長野さんたちに取られてしまうだろうから……ささやかな反抗、として。


< 136 / 253 >

この作品をシェア

pagetop