キス、涙々。
それをきっかけに動物フィーバーはおとずれた。
立て続けにウサギさん、クマさん、またネコさんをみつけ、スタンプをもらうことに成功する。
あとは、2周目のウサギさんとクマさんか……
熱中していたのか、午前の巡回が終わってもわたしは校内をうろついていた。
なんだかいつもより視界が広く見える。
みんなの顔がよくわかるような、そんな気がする。
「学校って、こんなに広かったんだ」
そのときだった。
なにかを焼いているような、香ばしい匂いが漂ってきたのは。
「焼きトウモロコシいかがっすかー」
焼きトウモロコシ……
すごく上手に焼いているものだから、じっと思わず見つめてしまう。
そのうち、ばちっと視線が合った。
「あ、八尾さん。いる?焼きモロコシ」
「えと、今日お金持ってきてなくて……」
言い訳みたいになってしまった。
だけど本当に財布を持ってきてなくて。
もともと文化祭を楽しめる状態ではなかったし、もうすぐ来る長野さんたちに取られてしまうだろうから……ささやかな反抗、として。