キス、涙々。
販売員の男の子は「それならしょうがないね」と肩をすくめた。
「う、ごめんなさ……」
「じゃあこれ、どうぞ召し上がれ」
「ぅえ……え?だから、あの、おかね……」
焼きたてのトウモロコシをずいっと差し出される。
ほ、ほんとに買えないのに……!
受け取れずにオロオロしていると、男子生徒は快活にわらった。
「いやーいつもお世話になってるんでね!これは俺からのサービスということで」
すると後ろから、別の男の子の声が飛んでくる。
「おまえのツケだかんなー」
「おっ、まじかあ」
「ったり前だべや。だからいいやつ選んで八尾さんにあげろよな」
「うわははは。了解了解、んじゃあこれに変えよ」
いつもお世話になってる?
ツケ?
頭のなかにハテナが浮かぶ。
そんなわたしの手に、レジ前にいた女の子がトウモロコシの串を持たせてくれた。
「はい、これがいちばん大きくて美味しそうだから。熱々のうちに食べちゃいなよ」