キス、涙々。


「なんで……」

「ん?」


なんで、優しくしてくれるの。



この人たちがしてたわけじゃない。


でも学校の人たちは大抵、わたしの顔を見るなり嫌そうな顔をする。

ときには“やなこと”を考えてるような目で見られることもある。


そのときのことを思い出して、ぐっと顔を下げそうになる……けど、おそるおそる顔をあげたとき。



「……あ、」


わたしは気づいてしまった。


レジ前の女の子、声をかけてくれた男の子、奥でトウモロコシを焼いている男の子。


みんな、嫌な顔ひとつしてなかったことに。


もちろん邪な気持ちも、そこには存在してなかった。



それどころか。



「いつもありがとね、八尾さん。委員の仕事がんばって!」


向けられた笑顔はなによりも自然体だった。


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