キス、涙々。


広場に設置されたステージと観客席。

すでに多くの人が集まっていて、今か今かと開催を心待ちにしていた。



「げ、もう前のほう埋まってるじゃんー」


となりで長野さんたちが嘆いてるのを聞きながら、わたしは小さく呟いた。



「でも……」

「ん?」

「でも、わたし、今年は参加しないように、してもらったはず、なの」


振り向いた長野さんは、軽快に声をあげて笑った。



「あーそんなの。どうだってできるよ。だから心配しなくてもいいって」


心配なんか……

ぐっと唇をかみしめる。


おそらく他の人の告白も見たいんだろう。


長野さんたちは人の波をぐいぐいと押し寄せて、前列のほうに無理やり押し入っていった。


もちろんわたしも一緒に連れていかれる。


長野さんを含めて女子4人、男子2人で来ているようだった。

女の子たちはみんな中学の同級生だったけど、男の子はふたりとも知らない人だった。


ふたりともかっこよくて、わたしは怖じ気づく。



……どっちだろう。


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