キス、涙々。


「さて、どんどん参りましょう!ええとお次は、あ。……ふむ、なるほど!」


進行役の人が、手元の紙を凝視している。

そこに誰の名前が書いてあるか、わたしには一目瞭然だった。


一瞬だけ面倒くさそうな顔をした進行役の人が、すぐに笑顔をつくる。



「次の参加者は、我が高イチの美少女風紀委員!その容姿はあのセクシー女優と瓜二つ!八尾ましろさん、舞台へどうぞ!」



今年こそは彼女のお眼鏡にかなう殿方は現れるのでしょうか!


“泣き虫なアユリちゃん”の攻略に挑戦するのは、読モをしている○×高校の~くんです!それでは~くんも上がってきてください!



ポップなBGMも。

観客たちの声も。

長野さんたちの声も。

背中を叩かれる痛みも。


すべてが遠くの出来事のように思えた。





なんで。


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