キス、涙々。
それでも。
やっぱり周りはわたしがアユリちゃんに見えてしまうらしい。
アユリちゃんが注目されるほど、女子たちからの視線が厳しくなる。
アユリちゃんが売れるほど、男子たちからの視線がいやらしくなる。
それらの視線に耐えながら、わたしは何度も思った。
わたしは……
わたしはこんなに可愛くない。
わたしはこんなに自信を持てない。
わたしはこんなに強くない。
わたしはこんなふうに笑えない。
わたしはアユリちゃんにはなれない。
わたしは、アユリちゃんじゃない。
ただのよわむしで泣き虫な、八尾ましろなのに。
そのことを誰もわかってくれなかった。