キス、涙々。


「……あのさあ」


ふいに声をかけられてはっとする。

目の前には見知らぬ男の人がいた。


他校の制服を着た彼は、あきれ顔でこちらを見つめている。



「おれの声、聞こえてる?ぼーっとしてんなよなあ」

「えっと……」


いつのまに舞台に上がってたんだろう。

はやし立てる観客たちの声が、意識した途端に大きく感じられる。


たぶん、いま、告白された。

こ、断らなきゃ。



「……ごめんなさ、」

「えー!?聞こえないよー?はっきり喋りなよ、アユリちゃーん!」

「っ」


長野さんたちのいるほうからだった。


去年よりもずっとひどいヤジが飛んでくる。




あははははっ!

顔は似てても性格は全然ちがうねー!?


あ、もしかして脱いだらすごかったりするー?


あははははっ

ここで言うことじゃないけど、あんたほんとペッタンコだったもんねー?


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