キス、涙々。
「わ、わたしに、どうせって言うのは、もうやめてください。これ以上いやなこと、するのはやめてください……わたしは変わりたいんです。こんな自分を変えたいんです」
いま言わなきゃ。
伝えなきゃ。
涙が伝っていく。
視線が移っていく。
目の前の彼から、観客席へ。
世界とともに、声も広がっていく。
「この学校で、わたしは友だちができました。みんなのおかげで楽しく過ごせているんです。だからお願いします。
────もう帰ってください、長野さん」
長野さんは動じずに、わたしよりもずっと大きい声をすんなりと出した。
「は、あんたに友だちなんかできるわけないじゃん。なに言ってんの?あんまイキってんなよ!」
そのとき、
「イキってんのはどっちだって感じじゃない?」
ぼそり、と。
会場のどこかでそんな声があがった。
何気ないつぶやきのようなそれは、静まりかえっていた場に響いた。