キス、涙々。
それだけじゃない。
「負けるな八尾さん」
「ましろちゃんがんばれー!」
舞台の上にいるわたしに、いくつもの声が飛んできた。
男の子も、女の子も。
わたしに向ける目はいままでに感じたことのないものだった。
「……ああ、そっか」
すとん、と。
こころに何かが落ちる。
目を背けていたのは、
周りを見ようとしていなかったのは、
わたしのほうだったんだね。
わたしを嫌っている人はたくさんいる。
だけどこうして、好きでいてくれる人もいるんだ。
────……ちゃんと見てくれてる人が、いたんだ。
「……んだよ。ふざけんなよ」
剣呑な声に、はっと我に返る。
目の前の彼は、わなわなと震えを隠そうともしていなかった。
こんなふうに注目するつもりはなかったのか、目を真っ赤に充血させている。