キス、涙々。
「俺は読モやってんだぞ……?てめぇらみてえな一般人とは格がちげーんだよっ…!!」
ばっと勢い任せに振り上げられた手。
ぶたれるっ……!
痛みに耐えるために、ぎゅっと目をつぶったときだった。
「ちょっとちょっと、やめてくれるかな」
「はっ……!?」
そんな声とともに、ふっと、香りが変わった。
……なつかしい匂い。
観客席から驚きと、黄色い悲鳴があがった。
わたしはゆっくりと目を開ける。
「やあ。迎えにきたよ、お姫さま」
「……王子、さま」
相手の手首をひねりあげながら、まっすぐこちらを見つめていたのは。
王子さまの姿をしたハギくんだった。