キス、涙々。
「はあ!?ましろはそんな子じゃ────」
「あんたになんか言ってない!」
たまらずと言ったように声をあげた美晴ちゃんを、長野さんは一蹴した。
そしてわたしに視線を向けたまま言った。
「あたしはぐず子に聞いてんのよ。ねえ……はやく答えろよ」
刺さるような視線をうけて、まるで喉が詰まったように声が出なくなる。
「ち、がう……そんなこと、ない」
それでもなんとか絞り出せば、
「……ほら。また泣いた。そういうとこだよ、ほんとに」
長野さんは怖いくらいに穏やかな表情と声になる。
それでも瞳の奥には静かな怒りがたえず灯っていた。
「そりゃあ泣くのは普通だよ。あたしだって泣きたいときもある。でもさ、おかしいじゃん。なんであたしたちが我慢してんのに、あんたはぐずぐず泣いてんの?」
おかしいじゃん、と長野さんはもう一度繰り返した。
顔だけで人生勝ち組なあんたが、なにを泣くようなことがあるの。