キス、涙々。
「どうせ甘やかされて生きてきたんだろ。親にも、周りの男にも」
長野さんの言ってることは正論でもなんでもない。
……暴論だった。
それでも彼女は本当にそう思ってるんだろう。
だからわたしのことが嫌いだし、イライラするんだ。
それはしょうがない。
嫌われるのは、しょうがない。
だけど、
「そっちが謝れよ。ごめんなさい、わたしが悪かったです、許してくださいって」
「や、だ……やだよ」
「は?」
わたしは震える足を一歩前に踏みだした。
「だって、悪いことして、ない……わたしだって、つらいこと…いっぱいあった」
「は、どうせ大したことないんでしょ」
「どうせって言わないで!」
びっくりしたのは長野さんだけじゃなくて、声を出したわたし自身もその声の大きさにびっくりした。
長野さんたちに反論したのは今日がはじめてだった。
こんなに大きな声を返したのだって。
わたしは深く息を吸う。
そして────
ずんずんと長野さんたちに近づいていき、直前で足を止めた。