キス、涙々。
「おい八尾!」
「え?」
加賀屋の呼びかけに振り向いた、ヤオ。
このときばかりは俺も「え?」と加賀屋のほうを向いた。なに勝手にヤオを呼んでんだ。
「このバカ、怪我してんだけど。保健室まで連れてってやってくれねーか」
「え、ハギくん怪我してるの!?」
驚いたように駆けよってきたヤオは、俺の手を見るなり小さな悲鳴をあげた。
「ひっ…痛そう……!ほ、ほほほ保健室……!」
「いいよこれぐらい。舐めたら治るって」
「な、治るわけないよね!?はやく保健室行かなきゃ!」
ヤオは反射的に俺の手を掴もうとして、怪我をしていることを思い出したのか、すぐにはっと手を引っ込める。
「は、はやくはやく!」
「はいはい」
手招きで誘導しようとするヤオが愛おしかった。
逆らう理由もなく、おとなしくついて行こうとしたとき。
「そうだ、八尾」
加賀屋がヤオを呼び止める。