キス、涙々。
「へっ?なに、加賀屋くん……」
「お前のが可愛いと思うけど」
俺の足も、ヤオに次いでぴたりと止まった。
は、なに言ってくれてんだこの男は?
すぐに隣の顔をのぞきこむ。
案の定、ヤオは真っ赤になっていた。
おいおいやめてくれ、ヤオの心を乱すな。
この子のこと赤くさせていいのは俺だけなんだから。
「え、かわ、……えっ?え?」
「笑った顔。すげー可愛いじゃん」
「っ……ありがとう、加賀屋くん」
今度こそ口から血が出そうになった。
これなんて拷問?
まだなにか言いたそうにしていたヤオ。
だけど俺のことも忘れてはいなかったらしい。
にこにこ笑いながら怒りを抑えていると、肩を控えめに叩かれた。
「行こうハギくん」
「うん」
俺は返事をしながら振り返る。
したり顔で奴が手を振っていたので、血反吐を吐くかわりに中指を立ててやった。