キス、涙々。
「わたしはいいの?他人じゃないの?」
「うん。ヤオはいいの」
その言い方がどこか妖艶に聞こえてわたしはきゅっと唇を結ぶ。
遅れて、心臓がバクバクととんでもない勢いで音を立てはじめた。
……わたしは、いいんだ。
自分だけは許されているという特別感で頬が熱くなる。
ええと、とにかく治療しなくちゃ!
消毒液、ガーゼ、絆創膏、包帯……
必要なものをそろえて、手当てに取りかかる。
「……ごめんね」
「ん?」
「この傷、わたしのせいだよね」
脱脂綿を手のひらにあてる。
わたしがいろいろ言われてるとき、ハギくんはこうして耐えていてくれたんだ。
深くえぐれた手のひらと、血のついた爪。
「……本当は殺してやりたかったよ」