キス、涙々。
とりあえずハギくんに会いにいってみよう。
そう思って文系コースに行った、のに。
「さくらならさっき帰ったよ」
「え、終礼が終わってすぐ来たのに……」
「さくら、いつも帰んの早いんだよね。登校してくんのは遅いくせに、下校は誰よりも早いの」
わたしはかるく放心しながらも、教室の外まで出てきてくれた男の子に尋ねる。
「なにか用事があるのかな」
「バイトだよ」
「え?バイト?」
「そう、バイト。あいつ、ここ最近けっこー詰め込んでるみたい。目の下にクマつくって、授業中も眠そうにしてるよ。それでも成績優秀なんだからほんとすごいよな」