キス、涙々。
「そう……なんだ」
わたしは話を聞きながら、視線をどこまでもつづく廊下へと移した。
もう見えないハギくんの姿を、こうしてさがし求めてしまう。
……決めた。
「わたし、ハギくん追いかけるね」
「そっか。まだ近くにいると思うから。走ったら追いつけるよ」
「うん!ありがとう。ええと、ハギくんの友だちの」
「……宮城」
「宮城くん!それじゃあ、またね。ありがとう」
ばいばいと手を振って、宮城くんと別れる。
これからハギくんに会えるかもしれないと思うと、廊下を駆ける足どりもどこか軽くなったような気がした。
「おかえり宮っち。ましろちゃん、なんの用だったん?」
「さくら。いま追いかけてった」
「フラれたんか宮っちぃ~。元気出せよ、萩にゃ勝てねぇ」
「いや俺好きな人いるし。それより……俺のこと、さくらの友だちだって」
「そのとおりじゃん?」
「言えなかったんだよ」
「んあ?」
「あいつ、」
────友だちだと思ってるやつ、
ひとりもいないよって。