キス、涙々。
ハギくんはすぐに見つかった。
中央棟でその後ろ姿をみつけてほっとする。
「ハギく────」
話しかけるタイミングを間違えた、と。
思ったときにはもう遅かった。
死角になって見えてなかったけど、ハギくんは生徒指導の蒲池先生と話していた。
声をかけたわたしに、先に気付いたのは先生だった。
難しかった顔が一瞬、呆気にとられたようにふっと解かれる。
その表情の変化にハギくんもこちらを向いて、それから笑った。
「ヤオじゃん。どしたの」
「あ、えっと……ううん。急ぎじゃないからあとで……」
「いやーいいよ。もう話も終わったとこだったし」
本当に?
先生の顔はまだ、なにかを言いたそうにしていた。
ハギくんはあえて先生の顔を見ないようにしているようだった。
そのままわたしの手をとって、廊下を歩き出す。
「萩!困ったことがあったらいつでも相談しろよ!先生はいつでもお前の味方だからな!」
背後から先生の声がわたしたちを追いかけてくる。
それを振り払うように、ハギくんはすこしだけ早足になった。