キス、涙々。
とりあえず休んでもらうつもりだった。
だけどこうして無理やり連れ込んでも、ハギくんが休んでくれる保証はどこにもない。
そのことに気付いたのはすでに扉を閉めたあとだった。
「……どうしよう」
「なんか言った?」
「え、ううん!なんにも」
どっと一気に汗が出てくる。
どうしよう、考えなしだ。
いつまでも扉に向き合っているわけにもいかず、ハギくんを振りかえる。
彼は教室の中央で、なにをするでもなく突っ立っていた。
ぎこちない足どりでハギくんに近づいていく。
ハギくんがこちらを見て、ふっと堪えきれないように吹き出した。
「いま、笑った」
「やっぱりいつものヤオだと思って」
その口ぶりは、さっきまではいつものわたしだと思ってなかったみたい。
ハギくんがちょんちょんと自分の頬を指さした。
わたしはそれを真似して頬に手を持っていくと、そこが濡れていたのでびっくりする。
いつのまに、わたしは泣いていたんだろう。