キス、涙々。


「とりあえず座ろっか」


リードしていたのはわたしだったはずなのに、結局すぐにハギくんに身を任せることになってしまう。


わたしは手を取られるがままに、床に座りこんだ。



そのとき、改めてハギくんの顔を確認した。


宮城君の言ってたとおりだ。

近くでじっと見なきゃわからないほど薄いけど、たしかにそこには寝不足の印があった。



寝てほしいと思った、今すぐに。


たとえ30分だとしても睡眠は睡眠だ。



そうは思っていてもなかなか言い出せずにいたら、目元を指ですくわれる。


ごめん、と謝って涙をぬぐう。



「なんでだろう。なにも悲しいことはないのに」


最近知ったことだけど、わたしはドライアイでもあるらしい。


まばたきの回数が人よりちょっと少なくて、だから目が乾燥して涙が出やすいんだとか。


まあただ純粋に泣き虫であることには変わりないんだけど。


それにしたって、いまは泣く理由がなかった。



じゃあドライアイかな、なんて思ったときだった。


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