キス、涙々。
「わっ」
「どうせなら膝かしてよ」
膝の上に、あたたかい重みが乗ったのは。
ごろんと横になったハギくんは、下からわたしの顔を見あげる形になった。
「いい眺め。いいよ、もっと泣け泣け」
「だ、だいぶ酷いこと言ってるよ……!?」
わたしはなんだか思い通りになりたくなくて、目をぐしぐし擦る。
メイクはしていないから気にせず擦っていたら、その手をぱしりとつかまれた。
「そんな擦んないほうがいいって。ひりひりするよ」
「じゃあどうしたらいいの」
「だからいいよ」
ハギくんはわたしの頬に手を伸ばした。
「いいよ、ヤオ。……泣いていいよ」
ゆっくりと子どもに言い聞かせるような言い方。
ふとあることに気づく。
なんでそんなことを思ってしまったのかわからない。
ふいに思いついた考えは、もうそうだとしか思えなくなった。
ぽろぽろ、にわか雨のような雫が落ちていく。
それがハギくんの頬に落ち、すうっとすべって濡れたあとをつくった。
「ハギくんが泣いてる」