キス、涙々。
「……ハギくんは」
「うん」
「泣くことができないんじゃない、の?」
空中にふわふわと舞っている微細なほこり。
光に反射して小さな雪粒のようにみえた。
ハギくんの黒い髪の先がかすかに揺れる。
すこしして、それは彼が首をかしげたんだと気づいた。
「それで?」
「……わたしが泣いてるとき、とか。泣いてほしいとき、とか。そういうの、ハギくんが泣きたかったときじゃないの……?」
「そうだったらどうする?」
はっと息を呑んだ。
てっきりはぐらかされると思っていたから。
そんなわけないじゃん、考えすぎだよ、って訂正されるかと思ったから。
ハギくんは認めなかった。
でも……否定もしなかった。