キス、涙々。


「……ハギくんは」

「うん」

「泣くことができないんじゃない、の?」



空中にふわふわと舞っている微細なほこり。


光に反射して小さな雪粒のようにみえた。



ハギくんの黒い髪の先がかすかに揺れる。



すこしして、それは彼が首をかしげたんだと気づいた。





「それで?」

「……わたしが泣いてるとき、とか。泣いてほしいとき、とか。そういうの、ハギくんが泣きたかったときじゃないの……?」


「そうだったらどうする?」



はっと息を呑んだ。

てっきりはぐらかされると思っていたから。

そんなわけないじゃん、考えすぎだよ、って訂正されるかと思ったから。


ハギくんは認めなかった。



でも……否定もしなかった。


< 199 / 253 >

この作品をシェア

pagetop