キス、涙々。
なんだろう。
手元に彼のものがあるからか、授業中にもふとした瞬間にハギくんの顔がちらつく。
板書を書き写しながらも、ノートの端にポポロくんを描きながらも、
浮かぶのはあの恍惚とした表情だった。
ハギくんはつねに余裕そうにほほ笑んでるんだけど。
わたしが泣いたときにだけ見せる、あの、たまらないといった表情。
ハギくんはいわゆる泣き顔フェチなんだ。
その、泣き顔に興奮するっていうあれ。
わたしの泣き顔がドンピシャかなんなのかはわからないけど、ハギくんがわたしの泣くさまをえらくお気に召しているのはたしか。
正直、ヤバい人だと思う。
風紀委員の仕事がなかったら絶対関わってなかった。
「あ、消しゴム落としたよ」
「っ…ありがとう八尾さん」
「ううん。どういたしまして」