キス、涙々。



「で、俺のところにきたわけ」

「……仲、いいから」

「決してよくはないんだけどな」

「蒲池先生はなにも教えてくれなかった」

「だろうな」



生徒会室に入ったのは初めてだった。


珍しいものが置いてあるから、いつもならきょろきょろしていたと思う。

だけどいまはそんな余裕もなく、ひとり残っていた加賀屋くんを見つめる。



「誰もハギくんの連絡先、知らないの。でもこの前の文化祭のとき、加賀屋くんはハギくんと連絡取り合ってたみたいだから」

「あれはあんときだけ。すぐ消した」

「え、うそ」

「ほんと」



なにかの書類をさばいていた彼は手を止めずにすこしだけ笑う。



「お前…意外と行動派だな」

「そんなことない」


他クラスに行くのも怖いし、先生に話しかけるのも苦手。

普段なら絶対にしないことだった。


< 204 / 253 >

この作品をシェア

pagetop