キス、涙々。
「で、俺のところにきたわけ」
「……仲、いいから」
「決してよくはないんだけどな」
「蒲池先生はなにも教えてくれなかった」
「だろうな」
生徒会室に入ったのは初めてだった。
珍しいものが置いてあるから、いつもならきょろきょろしていたと思う。
だけどいまはそんな余裕もなく、ひとり残っていた加賀屋くんを見つめる。
「誰もハギくんの連絡先、知らないの。でもこの前の文化祭のとき、加賀屋くんはハギくんと連絡取り合ってたみたいだから」
「あれはあんときだけ。すぐ消した」
「え、うそ」
「ほんと」
なにかの書類をさばいていた彼は手を止めずにすこしだけ笑う。
「お前…意外と行動派だな」
「そんなことない」
他クラスに行くのも怖いし、先生に話しかけるのも苦手。
普段なら絶対にしないことだった。