キス、涙々。


遅刻指導を自分から申し出たのははじめてだった。


朝のHRがはじまってもしばらくのあいだ、正門に立っていることが許される。


もちろんそれは遅刻してくる生徒を指導するためだけど、わたしの真の目的は別にあった。



完璧に私情だ。

言い逃れもできないほどに私情をはさんでいる。




────ハギくん。


今日、遅れてくるかはわからない。

もしかしたら学校に来ないかもしれない。


会えたら今度こそ、伝えたいことがあった。



他の遅刻者の指導をしながら、わたしはハギくんを待ち続ける。


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